全国初、森林を含む町内全域に
LPWA通信網を整備
愛媛県 久万高原町役場
総務省 令和元年度 情報通信技術利活用事業費補助金(地域IoT実装推進事業)を活用
親機1台・中継機20台で
広域のIoT通信インフラを構築
約600㎢の広大な面積のほぼ全域で
IoT通信が可能に!
林業が盛んな久万高原町では全国初となる森林を含む町内全域のLPWA通信インフラの整備を2020年2月より実施。フォレストシーの独自のIoT通信規格「GEO-WAVE」を活用した自営通信インフラの構築技術と製品が採用されました。これにより、林業従事者が事故発生時に携帯圏外の山奥からでも役場・消防まで位置情報とメッセージを含む双方向のSOS通報ができるようになり、さらには獣害対策のわなの捕獲通知による見回り負担軽減も実現。河川の水位監視など地域防災への活用も開始しています。
久万高原町の抱える課題
久万高原町は急峻な山と谷が連なる四国山地に位置し、愛媛県最大の583.7km²という広大な面積を誇り、そのうち90%が森林の町で、林業が主要産業となっています。林業は足場の悪い傾斜地で、重機やチェーンソーを使用して伐採や作業路開設、下草刈り等の施業を行うため、全産業の中で突出して労働災害の発生率が高い業種です。しかしながら、事故が起きた時、山中には携帯電話の電波が繋がりにくい地域が点在しているためすぐに救助が呼べず、重症化を招きやすい事が大きな課題でした。
課題に応える独自LPWA規格
GEO-WAVE
その課題を解決するべく、久万高原町では携帯圏外でも繋がる、低コストで広域をカバーできるLPWAによって町の全域を網羅できる通信インフラを構築し、事故等が発生した際にその場所が携帯電話のエリア外であっても、正確な位置情報を伴った救助要請を即時可能にする取り組みを計画しました。 一般的なLPWAには、無線局の免許が不要な出力20mW以下の規格(特定小電力無線)が多く、久万高原町のような険しい山間部を有する地域では実用性に欠けるため、250mWという高出力な規格(陸上移動局無線)で山間部を含む広域カバーを得意とする弊社のGEO-WAVEが適していると評価・採用され、インフラ構築が完了し、現在各種機器の運用サポートが進んでいます。
親機1台と中継機20台、
そしてGeoChatで課題解決
町内のほぼ全域を親機1台と中継機20台でカバーすることができました。このGEO-WAVEインフラを活用し、林業従事者の方々には携帯圏外からも正確な位置情報を持ったSOSやメッセージを送ることのできるGeoChatを使っていただいています。こちらの端末はBluetoothでスマートフォンと接続し、専用アプリを使用することにより、SOSやチャットコミュニケーションが可能となり、緊急時の通報や日常の業務連絡等に活用されています。
林業従事者の見守り
<GeoChatの活用 >
2020年10月14日、愛媛県消防防災航空隊と久万高原町消防本部の消防防災ヘリコプターを使用した合同訓練が久万高原町内で行われ、要救助者と消防署管制室のやりとりを想定した訓練にGeoChatが用いられました。
訓練は携帯圏外エリアで作業していた林業従事者の方が怪我をして、町内のLPWA網を活用しGeoChatで消防へ救助要請をおこなう、という現実に即した形で行われました。GeoChatから発信されたSOSは、消防本部で受信され子機の位置やIDで誰がどこでSOSを出しているか素早く把握でき、まずはドローンで実際の事故発生現場の確認、その後ヘリによる救助が行われます。
加えてGeoChatと連携したスマートフォンの専用アプリで送信されたメッセージから怪我の状況などの現地情報も踏まえ、迅速かつ効果的な救助活動につなげます。
今回の訓練を通じて誤報の抑制など安定化のための製品改良は勿論のこと、役場・消防本部・林業関係者の方々などが訓練を積み重ねて救助要請が円滑にいくように運用体制の構築が今後も進められる予定です。
防災対策等多用途への展開
<水位センサーの設置>
久万高原町では、中山間地域のIoTに適したLPWAであるGEO-WAVEに対するご期待から、林業以外の分野でも積極的に活用する構想をもって、LPWA通信網の町内全域整備を行っていただきました。現在、町内では獣害対策や遠隔での河川の水位監視も始まっておりますが、今後も防災、観光客や高齢者見守り、不法投棄対策など様々な用途にご使用いただけるようサポートを続けています。
全国初の成功!
<マンホール内の水位監視>
久万高原町では林業の見守りだけでなく、防災への取り組みの一環として下水用マンホール内に水位センサーを試験的に設置。計測した水位データは、弊社が町内全域に構築したLPWA通信網 「町ごとまるっとIoTネット」によってクラウドシステムヘアップロードされ、管理画面から確認できるように構築しました。マンホール内の調査は、従来は人手による調査、もしくは専用の通信機能付きマンホールを使用する調査が一般的でしたが、弊社の高出力のIoT通信規格「GEO-WAVE」により、既設のマンホールをそのまま使用しての水位データの取得に全国で初めて成功しました。 ※水位センサー及び通信機器は実証実験の終了に伴い現在は取り外されています。